<執筆者:弁護士 生田秀>
「借金があって破産しないといけないから、養育費はもう支払えない」
と元配偶者に告げられて、
「もう養育費を支払ってもらうことはできないのか・・・」
と絶望的な気持ちになっている方。
本当に相手が自己破産の申立てをするのであれば、実はチャンスかもしれません。
破産と免責許可の申立てをすると、裁判所の手続を経て、一定の事由を満たす場合には、免責が許可されます。
つまり、借金を返さなくてもよくなるということです。
しかし、破産手続によっても免責されない種類の債権があります。
非免責債権といいます。
具体的には、租税等の請求権や、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権等は、非免責債権とされています。
そして、養育費や婚姻費用の請求権も、非免責債権です。
つまり、破産をしても、個人の税金や養育費の支払義務は免責されませんが、他の借金は免責されるため、結果的に養育費を支払いやすくなるということになります。
加えて、養育費債権者は、裁判所に債権者として届出をすることにより、破産手続の記録を閲覧することができます。この記録の中には、破産者が裁判所に提出した破産者の財産状況等を説明する資料も含まれています。
そのため、現在の勤務先、保有する銀行口座や財産の状況を知ることができます。
破産手続中は、給与の差押え等の強制執行をすることはできません(強制執行中止命令が出てしまいます)。
しかし、差押可能な財産がありそうであれば、破産手続が終了した後で、強制執行の申立てをすることは可能です。
実際にこの手法で回収につながった事例もあります。
養育費債権は、法律上、他の債権に優先されている債権です。
あきらめずに請求していきましょう。