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Child support養育費コラム

2019年08月26日

自分や相手が再婚する場合の養育費請求について

<執筆者:弁護士 生田秀>
本コラムでは、自分や相手が再婚する場合の養育費請求について解説します。

離婚後の長い人生では、想定していなかったいろいろなことが起きるもの。
再婚もその一つです。

自分が再婚をするかもしれないし、相手が再婚をするかもしれない。
その場合、養育費はどうなってしまうのでしょうか。

自分が再婚をする場合と相手が再婚をする場合、養育費の取り決めがある場合と無い場合とで、それぞれ違いがあります。まとめると、以下の表のとおりです。

1 自分が再婚をした場合

再婚をした場合、再婚相手と、自分の子どもを養子縁組する場合が多いです。名字をそろえて、家族としての一体感を高めるためです。

しかし、養子縁組をすると、第1次的な扶養義務者は、養親ということになります。ですので、第2次的な扶養義務者である実親の扶養義務は、養親の扶養義務に劣後することになります。扶養を求めるならば、まずは養親に請求してください、ということです。

(1)養育費の取り決めなし

従前、養育費の取り決めが無い場合は、養子縁組後に実親に養育費を請求しても、それは筋違いというもので、実親に養育費を請求することはできません。養親がいるのに実親が扶養義務を履行しなければならないのは、養親が家を出てしまって全く金銭的援助がされていないとか、障害を負って扶養能力を喪失したというように、養親に経済的資力が無いと判断される場合に限られると思われます。

(2)養育費の取り決めあり

一方、従前、養育費の取り決めがある場合は、相手方との間で減額(0円にすることを含む)について合意をするか、相手方が減額調停の申立てをして裁判所の判断で養育費が減額になるまで、養育費は減額にはなりません。この点、養子縁組の結果、自動的に減額になると勘違いをされている方も多いので注意が必要です。養育費減額調停の結果、養育費が減額になる場合は、申立てをした月から遡って減額になります。

自分が再婚をして養子縁組をした場合、養育費減額調停の結果、0円となる可能性が高いと言えますが、実際の審判例を見ていくと、必ずしも0円になっていないケースもあります。双方の世帯の収入状況、子の扶養を求める必要性、これまでの支払いの実績、再婚を知った後でも養育費を支払い続けているかどうか等の事情が考慮されていると思われます。

2 相手が再婚をした場合

養育費を支払う義務がある人が再婚したとしても、それだけで養育費の金額が変動するわけではありませんが、再婚した結果、扶養義務者が増える可能性が有ります。

例えば、再婚相手との間に新しく子どもが生まれた場合、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合、再婚相手が専業主婦で扶養が必要な場合などが考えられます。

この場合は、相手が扶養義務を負う人が複数あると考えて養育費を計算することになりますので、その分、養育費を請求する側にとっては、自分の子の取り分が少なくなってしまうことになります。

相手が勝手に再婚したり新に子どもを作った結果、自分の子の取り分が減るのは理不尽だ、と感じられるかもしれません。しかし、離婚している以上、相手が再婚することを止めることはできませんし、再婚相手との子も、再婚前の子と同等に扶養を請求する権利がありますので、裁判所としては両方の権利を同等に保護する必要があります。

養育費の請求をすると、よほど養育費を支払いたくないのか、急に扶養義務者が増える人がいます。やれ「父親を扶養している」とか「甥の学費を支払っている」といった主張が出てきますが、親を扶養する義務と自分の子を扶養する義務とでは、自分の子を扶養する義務が優先されますので、取るに足らない議論と言えるでしょう。

また、「再婚相手が妊娠しており子どもが生まれる予定がある」という主張も見受けられます。現実に生まれていない子を扶養義務者としてカウントするのは困難でしょう。もっとも、出生が確実な時期に入っており、後から減額の協議をするのが手間な場合は、出生を条件とする減額を予め合意しておくことも考えられます。

(1)標準的算定方式を使用して計算する

相手に自分の子以外の扶養義務者がいる場合は、養育費算定表ではなく、標準的算定方式を使用して養育費を計算します。

ア 相手方の再婚相手が専業主婦(主夫)で収入が無い場合

再婚相手の生活費指数(成人を100、15歳以上の子を90、15歳未満の子を55)を55として計算します。

養育費を支払う義務を負う相手方(義務者)が、前婚の子、再婚相手、再婚相手との間の子と仮に同居したと仮定して、前婚の子の生活費に充てられるべき金額を算出し、それを権利者と義務者が基礎収入の割合により按分します。義務者が再婚相手の連れ子と養子縁組した場合も同様です。

※標準的算定方式の考え方や、基礎収入の算定方法は、こちらのコラムを参照してください。

①前婚の子の生活費=義務者の基礎収入×(前婚の子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+再婚相手の生活費指数+再婚相手との間の子の生活費指数+前婚の子の生活費指数))
②義務者が負担すべき前婚の子の養育費=前婚の子の生活費(①)×(義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入))
③養育費月額=②の金額÷12

相手方の再婚相手に収入がある・ない、というのはどのように判断するのでしょうか。たとえば、再婚相手が産休・育休中である場合は、再婚相手に給付金以外の収入が無いことになりますが、育児休業期間経過後は再婚相手が復職する可能性が高いケースもあります。

そのような事案において、再婚相手の育児休業期間が終了するまでの月までに限り、再婚相手の生活費指数を考慮して養育費を減額し、その後は考慮しない(仮に復職をしなかった場合には再度減額調停をすればよい)と判断した審判例があります(福島家裁会津若松支部平成19年11月9日審判・家月60巻6号62頁)。

イ 相手方の再婚相手に収入があり、再婚相手との間に子がいないケース

相手方の再婚相手に相当額の収入がある場合は、上記アで55とした再婚相手の生活費指数を計算に入れないで算定します。相手方が扶養義務を負うのは前婚の子だけですので、再婚をしていない場合と同じ計算になります。

ウ 相手方の再婚相手に収入があり、再婚相手との間に子ができたケースまたは再婚相手の連れ子を養子縁組したケース

再婚相手に相当額の収入がある場合は、上記イと同様に、再婚相手の生活費指数を計算に入れないで、前婚の子と再婚相手の子が義務者と同居していると仮定して標準的算定方式にあてはめます。もっとも、後婚の子については、再婚相手も扶養義務を負っているのですから、その生活費指数を、義務者と再婚相手との収入比により按分します。

①再婚相手との間の子の按分した生活費指数=再婚相手の子の生活費指数×(義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+再婚相手の基礎収入))
②前婚の子の生活費=義務者の基礎収入×(前婚の子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+再婚相手との間の子の按分した生活費指数+前婚の子の生活費指数))
③義務者が負担すべき前婚の子の養育費=前婚の子の生活費(①)×(義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入))
④養育費月額=②の金額÷12

(2)養育費の取り決め無し

従前の養育費の取り決めが無い場合は、養育費分担調停で具体的な養育費の金額を算定します。その場合、上記(1)のとおり、相手方の扶養義務者が増えたことによって、相手方の扶養義務者が自分との間の子(前婚の子)だけである場合と比較して、養育費の金額は減少します。

(3)養育費の取り決めあり

養育費の取り決めがある場合は、相手方が減額調停を起こしてくるまでの間は、従前の合意どおりに養育費を支払う義務があります。減額調停では、上記(1)の考え方に従って再度妥当な養育費の金額が算定される可能性が高いといえます。

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