<執筆者:弁護士 生田秀>
養育費を回収するにあたり、最も効果的なのは給与債権の差押さえです。
給与差押えのメリットは、
額面金額から、所得税の源泉徴収・社会保険料等を控除した手取額の2分の1までの範囲で差押えができる
未払いが発生している場合には、毎月申立てをしなくても、1度の申立てで、今後発生する翌月以降の養育費も、発生する都度差し押さえることができる。
給与の支払義務者である勤務先から送金を受けることができる
というメリットがあります。
一方、デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
勤務先は振込手数料を負担する義務が無いので、振込手数料分、支払われる養育費の金額が減ってしまう
養育費の支払義務者が勤務先を退職してしまう可能性がある
養育費の取り決めの内容によっては、支払いが1か月遅れになってしまう可能性がある(例えば、給与の支払日が1月20日、1月分の養育費債権の支払期日が1月31日である場合、給与支払日前に給与債権の差し押さえができたとしても、1月分の養育費は未発生であるため、取立ができるのは2月20日の給与支払日分からになります)
このようなメリットとデメリットを踏まえて、養育費の支払義務者が任意で支払いをする意思がある場合には、できるだけ強制執行をせずに支払ってもらうのがよいと私たちは考えています。
その方が、支払う側としても、自分の意思で子どものために送金をしているという気持ちになれるはずであり、支払いが途切れることなく続く可能性が高いからです。
しかし、未払いや遅延が長期化するなど、お子様の生活を維持するためにも強制執行をするほかないと判断される場合には、時機を逸することなく差押えに移行するのが適切です。
勤務先が不明な場合にも、現在は「第三者からの情報取得」制度により、勤務先情報を市町村や年金事務所から取得する手段もありますので、ぜひ役立てていきましょう。