いままさに困窮している!
生活保護を申請したいけど、保護を申請すると、離婚した元配偶者に養育費を請求するように言われるんじゃないかと思って心配・・・。
養育費を請求するか、生活保護を申請するか、どちらか迷っている・・・。
<まずは生活保護から>
このような相談があった場合には、ケースバイケースではありますが、まずは生活保護を申請することをお勧めしています。
生活保護法には、「保護の補足性」と言われる原則があります。
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
資産や能力、つまり預貯金などの資産があったり、働こうと思えば働く能力があるのであればまずはこれを活用することが「要件」で、それでも最低限の生活ができない場合に限り、生活保護を受けることができます。
要件とは、「必ず必要」という意味ですね。
これに対して、養育費(扶養義務者の扶養)は、「要件」ではなく「優先」と書いてあります。
つまり、養育費の請求をすることは生活保護受給の「要件」ではありません。養育費を請求しなくても、生活保護を受けることはできます。
いままさに困窮しているのであれば、まずは生活保護を受けて生活を安定させてから、養育費の請求をしていった方が良い場合が多いと思います。
<養育費を受け取ると保護費は減額になるか>
ただし、生活保護受給開始後に養育費の支払を受けた場合は、受け取った養育費は収入として申告しなければならず、受け取った養育費の分、保護費は減額されます。扶養が生活保護に「優先」するからです。
ですので、生活保護を受け取っている方から養育費請求の相談を受ける場合には、保護費が減額されてしまうことを説明しています。説明をして、それであれば養育費請求は止めておこうと思う方もいらっしゃいますし、生活保護からの脱却を目指して、それでも養育費の請求をしたいという方もいらっしゃいます。
実際に、母子二人の家庭で、子どもが小さい間は働くことができず生活保護を受けていたけれど、子どもが小学校に上がって働く時間を増やすことができ、また、養育費の支払も受けられるようになって、生活保護を卒業されたケースもありました。
<扶養照会との関係>
生活保護の申請があった場合、行政側では「扶養義務の履行が期待できる者」に対して扶養照会をします。
養育費は生活保持義務という強い扶養義務の対象であるため、原則として扶養照会が実施対象されます。この扶養照会は、扶養義務者に書面等で照会することにより行なわれますが「直接照会することが真に適当でないと認められる場合」(局長通知第5の2(2)ア)には、直接の照会はされません。
そして、DV案件の場合のように、扶養照会を行なうことでかえって自立の妨げとなってしまう場合には「直接照会することが真に適当でないと認められる場合」に当たるため、直接の照会はしないことになります。
このような場合に当たるかどうかは、生活保護の申請者からの聞き取りによって判断されますので、特にDV案件の場合には、別居に至った事情などを適切に説明して、直接の扶養照会をせずに保護を実施してもらうよう相談してみましょう。