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Child support養育費コラム

2020年07月27日

養育費保証サービスの問題点について

<執筆者:弁護士 生田秀>

株式会社小さな一歩」をはじめとする養育費保証サービスが次々と立ち上がっています。

ひとり親を支援する多様なサービスが提供されて選択肢が増えることは望ましい反面、いわゆる養育費保証サービスは弁護士法に違反する可能性があり、
また、養育費保証サービスと提携する弁護士には非弁提携の疑い・弁護士職務基本規定違反の可能性が生じます。

そのため、日弁連は会員向けウェブサイトにおいて、こうした業者から協力を求められた場合には慎重に対応するよう注意喚起をしています。

令和2年7月17日付の日弁連の文書「いわゆる『養育費保証サービス』に関する注意喚起について(情報提供)」によると、養育費保証サービスは、弁護士法73条違反・弁護士法72条違反の2点の理由で弁護士法に抵触する可能性があります。

1 弁護士法73条違反

弁護士法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その実行を業とすることができない。」としています。

養育費保証サービスは、養育費請求権という他人の権利を、保証による求償権取得という形で実質的に譲り受けて、交渉等の手段により業として養育費回収を行っていることから、弁護士法73条に抵触します。

以下は私見ですが、形式的に弁護士法73条に違反しても、「権利の譲受の方法・態様、権利を実行する者の業務内容や実態等からみて、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合」は、判例上、73条違反の違法性が阻却される可能性は有ります。

しかし、保証料率が50%ときわめて高額なサービス(日本法規情報(アスクプロ株式会社)が運営する「養育費安心サポート」。なお、保証料50%は既に養育費が支払いがない方向けの設定であり、支払いがある方向けの設定は10%)や、「養育費あんしん受取りサービス」をうたいながら養育費保証をうたって広く期待を集めながら実際には2か月程度延滞が発生した場合には契約が終了されてしまうようなサービスは、国民の法律生活上の利益に対する弊害があると考えられます。

2 弁護士法72条違反

弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」として、弁護士・弁護士法人以外の者が「報酬を得る目的」で「法律事務を取り扱う」を禁止しています。

日弁連の上記の注意喚起文書には、「業者によっては、養育費保証サービスの附随サービスとして、養育費を定めた文書が存在しないときに、養育費に関する交渉、書面作成を弁護士が行うサービスを提供するところもあります。その際に、名目のいかんを問わず弁護士紹介の対価の授受が行われていると評価される場合には、法律事務の有償周旋(非弁提携)として弁護士法72条に抵触する可能性があります。」と記載されています。

これは、株式会社小さな一歩が提供する「書面作成サポート」を対象とした指摘と考えられます。この点、同社はウェブサイトのFAQにおいて「協力弁護士を通じた書面作成サポートは無償で提供されるから小さな一歩が取り扱っても問題無い。」という旨の説明をしています。

しかし、「書面作成サービス」自体が顧客に対して無償で提供されているとしても、書面作成で終了することは無く、その後には有償の「保証サービス」が提供されることになります。同社のウェブサイトには「書面作成の完了をもって、すぐに保証契約がスタートし、養育費の入金も開始されます」と記載されています。したがって、「書面作成サービス」と「保証サービス」は、連続的・一体的に提供されているものと言えます。

そうすると、「書面作成サービス」と「保証サービス」を全体的に見た場合には、㈱小さな一歩が「報酬を得る目的」で「法律事務の取扱い」をしていると考えられますし(非弁護士の法律事務の取扱い)、実質的に協力弁護士を紹介する対価を得ていると考えられる場合には法律事務の有償周旋(非弁提携)に当たり、弁護士法72条に違反する可能性が有ります。

3 依頼者にとってどのようなリスクがあるか

養育費保証サービスに弁護士法違反の可能性があるとしても、依頼者自身が法的リスクを負うわけではありません。
しかし、弁護士法違反は「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」の刑事罰の対象となる行為ですので、企業のコンプライアンスの観点から、養育費保証サービスの提供を中止する事業者が出てくる可能性が有ります。
また、非弁護士と提携する弁護士も、弁護士法違反・職務基本規定違反により懲戒処分を受けるリスクがあります。日弁連が公式に注意喚起をしている中で、各弁護士としても養育費保証サービスへの協力には慎重にならざるを得ません。
そのため、協力弁護士が確保できずサービスの提供が滞るリスクや、保証会社による督促では滞納が解消されず保証が中止された場合の受け皿が確保できないリスクがあります。
なお、コニアスでは、養育費保証サービスを利用したものの、保証が途中で中止になってしまった方からのご相談もお受けしています。相談フォームでその旨を記載してお申込みください。

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